勉強会



 神の部屋で試験勉強をしていると、ガラッと言う音がして窓が開いた。

「宗ちゃん、ただいま!」

 パジャマにカーディガンを羽織った姿で、が部屋に入って来た。

 元気に部屋に入って来たと思いきや、その場にいた予想外の人物を見て動きが止まる。

「ま、牧さんっ !?」

 突然名を呼ばれて、牧は首を傾げた。

 の窓からのいきなりの登場に、いくつかの疑問を感じているらしい。

 凍り付いたように動かないに、神が助け船を出した。

「今帰ったの?」

 幼なじみの声で、は我に帰った。

「あ、うん。 先輩に、スウィートで勉強見てもらってたの。」

 時刻は 10 : 25 。

 閉店まで店にいたのかと、神は溜息を吐いた。

 しかも、スウィート。 (の馴染みの店だ。)

 場所がそこなら、の言う先輩は間違いなくあの人だ。

「ご飯は食べた?」

 神の問いには大きく頷いた。

 清田は数学の問題に頭を悩ませていて、他に余裕がない。

 牧は状況が飲み込めず、困惑していた。

「神、妹…か?」

 どう見たって似ていない。

 神は苦笑った。

「はい! 幼なじみのです! いつも宗ちゃんがお世話になってます!」

 ビシッと敬礼しながら言うに、神はたまらず小さく笑った。

。 牧さんが困ってるよ。」

 神に指摘されて、はわずかに顔を赤らめた。

「…?」

 聞き覚えがある。

「はい! 泉沢中の PG です!」

 元気いっぱいな声で、が答えた。

 牧は納得したように大きく頷いた。

「一度会ってみたかったんだ、俺の事知っているみだいだな。」

 すっと差し出された牧の大きな手を、力一杯握り返しながら、が言う。

「はい! インターハイ見に行きました! 牧さんのプレイスタイル大好きです!」

 が嬉しそうに、にっこりと微笑んだ。

 牧はわずかに口元を綻ばせた。

「ずいぶんと可愛い幼なじみじゃないか、神。」

 その台詞に、たちまちは真っ赤になった。

「…ちゃんとした格好してくれば良かった。」

 そんなを見て、清田が溜息を吐く。

「そりゃないっすよ、ちゃん。 牧さんが特別って事っすか〜?」

「えっと…それより、勉強!」

 はちょこんと、神の隣に腰を下ろした。

「湘北は中間ないの?」

 神が訊ねた。

「ううん、試験真っ最中だよ。 明日国語だから、先輩に教えてもらってたの。」

 が小さく首を傾げた。

 国語なら俺が教えてあげるのに。―――

「信を見てたら自分の勉強出来ないよ?」

 神の言葉に、は首を振る。

「宗ちゃんは、私の成績知ってるでしょ。 まだ一年の内容だし、心配しないの。」

 神は首を竦めただけで、それ以上は何も言わなかった。

は湘北なのか。」

 牧が手を止めてを見つめた。

って呼んで下さい、牧さん。」

 細く笑ってそう言うと、は牧の脇に置いてあるプリントの山に目線を落とした。

「見てもいいですか?」

 牧は頬を抓まれたような顔をして、苦笑った。

「見ても多分、わからないと思うけどな。」

 はその内の一枚に目を落とした。

「それを解けたら、何んでもしてやるぞ。」

 悪戯っぽく言って、牧は再びペンを走らせた。

「牧さん、止めた方が…」

 神が困ったように苦笑った。

「よし。 ちょっと頭を使いますか。」

 はにこにこと嬉しそうに、問題に取り込んだ。


 × × × × × × × × × ×


 第二回お勉強会です。
 今度は牧さんもいます。
 長くなるので2回に分けます。
 後半へどうぞ。   



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