3月14日。 休み時間。――― 「さんっ!」 は振り返った。 「どうしたの、桜木君?」 にっこり微笑んで訊ねる。 と、は首を傾げた。 「あれ? 今学校に来たの?」 桜木はコートと鞄を持ったままだったのだ。 「あ、あの! これ、どうぞ!」 押し付けるように、可愛らしいラッピングが施された包みを手渡す。 はきょとんとしていた。 「くれるの?」 自分を見上げて来る色違いの瞳に、妙な色気を感じてしまい、桜木は目をキツク瞑った。 「あの! 先月に、貰いましたので… ///// 」 はやっとわかったように手を叩いた。 「あ、ホワイトデー?」 コクコクと頷く桜木に、は細く笑った。 「コレ、買ってたから遅れたの?」 ラッピングですぐにわかった。 女の子に人気の高い、おしゃれな製菓子店の人気商品だ。 。――― 多少天然で抜けていても、お菓子のチェックは厳しい。 「あ、いやぁ… その………」 頭を掻いて困っている桜木に、はにっこりと笑った。 「ありがとう。 でも、さぼって買いに行ったりしたらダメよ。」 花のように笑ったに、桜木花道ノックアウト。 「…い、生きてて良かった………」 たとえ、所持金ゼロになったとしても、今の桜木は幸せを感じていた。 「さぁ、晴子さんにもあげに行こう。」 お昼休み。――― 「ちゃん〜v はっぴいホワイトデ〜v」 スキップに近い足取りで、宮城がの教室に訪ねて来た。 「宮城先輩、わざわざ教室に来てくれたんですか?」 すみませんと謝って、包みを受け取った。 「ちゃんが好きそうなのを選んだんだ。 味は保証するから。」 「はい、いただきます。 ありがとうございました。」 は首を傾げた。 「ところで、先輩。 彩子さんには返したんですか?」 ぐさっ。―――― 宮城リョータ、痛恨の一撃を喰らった。 「…あはは、いやぁ、その………」 視線を反らし、どもる。 そんな宮城の様子に気付かず、はにっこりと笑った。 「私より、彩子さんにちゃんとした物をあげて下さいね。」 もらえなかったとは言えず、宮城は心に深いキズを負って(笑) 教室に戻って行った。 「彩ちゃん…(泣)」 放課後。――― 「…やる。」 ずいっとコンビニの袋ごと、流川はに箱を渡した。 たとえコンビニ商品だとしても、この無関心な男には上出来だろう。 「ありがとう、買って来てくれたんだ?」 にっこりと笑うに、コクンと頷く。 他の子には、一切お返しをしていない。 「…お前にだけだから。」 流川が小さく呟いた。 「…特別、だから。」 を真っ直ぐに見つめる。 「もう、流川君ってば。」 が可笑しそうに笑った。 「誰に貰ったのか、覚えてないんでしょう? しょうがないわね。」 。――― 史上最強である。(笑) たしかにそうだが、流川が哀れなり。 「ん、ありがとう。 じゃ、部活行こう。」 先に歩き出したに、溜息を一つ。 「…どあほう。 どこまで鈍いんだよ…」 余談だが。 流川楓親衛隊・ブラックリスト、既に登録されているの欄に、二重丸のチェックが付いた。 部活終了後。――― どこか落ち着きのない様子の三井に、彩子が絡む。 「そ〜んなにそわそわしてないで、さっさと渡してくればいいじゃないですか。」 三井は恨めしそうに彩子を睨んだ。 「…出来たら苦労しねえよ。」 彩子は実に楽しそうに笑った。 「早くしないと、帰っちゃいますよ?」 すでに片づけを終えて、は制服に着替えていた。 「お疲れさまでしたーっ! お先に失礼します。」 ぺこっと頭を下げ、体育館から出てゆく。 「ほら! 男を見せなさい!」 力一杯、三井の背を突き飛ばす。 「てめぇ、先輩だぞ!」 勢い余って、三井はにぶつかってしまった。 「きゃっ!」 「だぁっ!」 二人仲良く、もつれて転んでしまう。 「いってぇ…」 ふるふると頭を振る三井の耳に、の声が届く。 「…先輩、重い………」 の上に圧し掛かるような格好だった。 「あ、悪い!」 三井は慌てて離れて、を助け起こした。 「もう、潰されるかと思いました。」 ぷぅと頬を膨らませて、三井を見上げる。 犯罪級の可愛さである。 「あ、あのよ… ///// 」 三井はぽりぽりと頭を掻いた。 細長い箱をに差し出す。 「この前の、お返し…」 は首を傾げて、箱を受け取った。 「…開けてもいいですか?」 お菓子類ではない。 直感がそう悟った。 三井が頷くのを待って、は箱を開けた。 「え、先輩…?」 は三井を見上げた。 箱の中身は、天使を象った飾りの付いた、可愛らしいシルバーネックレス。 三井は照れたように、はにかんだ。 「…つけてやるから、後ろを向け。」 は首を振る。 「ダメです。 貰えません、こんな高価な物…」 「黙って後ろを向け。 先輩命令だ。」 三井、先輩と言う立場を上手く使った。 はしぶしぶ言われた通りに、後ろを向く。 「私、こんな物を貰える程、イイモノあげてませんよ?」 三井に言われ、たらした髪を持ち上げながらが言う。 「いいんだよ、俺がそうしてえんだから……… っ?」 ネックレスを付けようとして、三井はあるモノに気付いた。 襟に隠れてはいるが、の首には既に、チェーンがぶら下がっていた。 赤い石の指輪と、制服のボタンらしい物。 それにチェーンを通して、首から下げている。 (…藤真か?) バレンタインの日に、特別なチョコを貰った(湘北メンバーはそう思っている)藤真。 その指輪は藤真に貰ったのか。 でも、そのボタンは・・・。 「…先輩? いいですか?」 の声で我に返って、三井は止まっていた手を動かした。 「…おし、いいぞ。」 心境何やら複雑な三井に、は頭を下げた。 「ありがとうございます。 今度、何かお礼をしますから。」 ぱたぱたと走り去るに、三井は溜息を吐いた。 「…いつから付けてんだよ、ネックチェーン。」 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ はい、遅れました。 ホワイトデードリームです。 ごめんなさい。 ホワイトデー、忘れてました。 3/14に書いてます。(汗) 何か、流川が可哀相だ。(苦笑) ネックチェーン……… 新たな謎を残しました、天然ヒロイン。 では、後半どうぞ。 |